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東京高等裁判所 昭和60年(行ケ)229号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)及び二(審決の理由の要点)の事実、引用商標の構成、指定商品、登録出願日及び登録日が請求の原因二記載のとおりであることは、当事者間に争いがない。

二 そこで、審決を取り消すべき事由の存否について検討する。

1 前記のとおり、本願商標は、別紙に表示のとおりの図形及び文字よりなるものであることは、当事者間に争いがない。

ところで、本願商標の図形部分は何を表現したものであるのかにわかに理解しえないものであつて、図形部分から特定の称呼、観念を生ずるとは認め難いが、欧文字の部分から「ピービーエー」の称呼を生ずるものと認められる。なお、文字部分から特定の観念を生ずるものとは認められない。

原告は、本願商標の左側の図形部分中の黒い円点は、一〇個のボウリングのピンを上部から見た状態のものを示し、右側の円はボウリングのボウルを示すものであるとして、本願商標から、「ボウリングのピンとボウル」の観念、「ボウリングのピービーエー」」の称呼がそれぞれ生ずる旨主張するが、客観的にみて、本願商標の図形部分が原告主張のものを示し、これに接する者に「ボウリングのピンとボウル」の観念を惹き起こすとの点は直ちに首肯し難いものであり、また、本願商標からは「ピービーエー」の称呼を生ずるのみであつて、原告主張の称呼が生ずるものとは認められず、原告の右主張は採用できない。

引用商標から「ビービーエー」の称呼を生ずることは、当事者間に争いがない。

そこで、本願商標と引用商標の称呼を対比すると、両称呼は、語頭音において「ピー」と「ビー」の差異があるほかは、同一、同数の音の配列により構成されており、相違する「ピー」と「ビー」は、同じ音節「ヒ」の半濁音と濁音の各長音としての差異にすぎない同じ音質のものであつて、近似した音として聴取されやすいものであるから、取引者、需要者が商品取引を行う場合において、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、彼此相紛らわしく、聴き誤るおそれがあり、両商標は称呼において類似するものというべきである。

2 原告は、本願商標と引用商標の外観、観念上の類否について判断することなく、両商標は類似するとした審決は違法である旨主張する。

本願商標と引用商標の外観が異なることは当事者間に争いがないが(なお、引用商標から特定の観念を生じないことは当事者間に争いがないが、本願商標からも特定の観念を生じないこと前記のとおりであるから、この点に両商標に差異は存しない。)、商品の取引者、需要者は、商品に付された商標の外観、観念によつて商品の出所を判断して取引に当たるものとは限られず、商標の称呼のみによつて商品の出所を判断して取引に当たる場合も少なくないことは、取引の実際における経験則に照らして否定し難いところであるから、両商標が称呼において相紛らわしく、類似するものである以上、審決が両商標の類否判断をなすにあたつて、外観及び観念上の類否につき判断しなかつたことに違法はなく、原告の主張は理由がない。

以上のとおり、本願商標と引用商標とは、称呼において類似する商標であり、また、本願商標の指定商品が引用商標の指定商品と同一であることは明らかであるから、本願商標は商標法第四条第一項第一一号の規定に該当し、商標登録を受けることができないものであつて、審決の判断は正当であり、審決には原告の主張する違法の点は存しない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却する。

〔編註その一〕 本件の特許庁における手続の経緯は左のとおりである。

原告は、昭和四七年二月二四日、別紙に表示した構成よりなる商標(以下、「本願商標」という。)について、指定商品を第一七類「被服(運動用特殊被服を除く。)布製身回品(他の類に属するものを除く。)寝具類(寝台を除く。)」として、商標登録出願(昭和四七年商標登録願第二六二五二号)をしたところ、昭和五七年六月一八日拒絶査定を受けたので、同年一一月一五日審判を請求し、昭和五七年審判第二三一二九号事件として審理されたが、昭和六〇年七月三〇日「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は同年八月三一日原告に送達された。なお、原告のための出訴期間として九〇日が附加された。

〔編註その二〕本件に関する商標は左のとおりである。

別紙

<省略>

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